私のVRChat体験記

VRChatで培った「教える」経験が、現実世界での自己肯定感とキャリアにもたらした変化

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VRChatとの出会い、そして小さな「教える」経験の始まり

私がVRChatの世界に足を踏み入れたのは、今から数年前のことです。当初は単に多様なワールドを巡ったり、魅力的なアバターを探したりする日々でした。しかし、このプラットフォームの持つ深い表現力、特にアバター改変やワールド制作といった技術的な側面に魅力を感じ始めると、私のVRChatでの過ごし方は大きく変わっていきました。

UnityやBlenderといったツールを使ったアバターのセットアップや、Shaderの導入、さらにはPhysBoneの設定など、学びたいことは尽きませんでした。インターネット上の情報や、すでにスキルを持つユーザーの方々から教えていただきながら、少しずつ技術を習得していきました。この過程で、VRChatにおける情報の非公式性や、初心者にとっては敷居が高いと感じられる部分があることを肌で感じました。

コミュニティの中での「知の共有」

ある時、私が特定のShaderに関する技術的な質問に答えたところ、その相手から大変感謝された経験がありました。それが、コミュニティ内で自分の知識を共有することの喜びを知った最初のきっかけです。その後も、アバターの揺れもの設定で困っている方や、特定のギミックの組み方が分からないという方を見かけると、積極的に声をかけ、知っている範囲で情報を提供するようになりました。

初めは簡単な説明や、公式サイトへのリンクを示す程度でした。しかし、次第に同じような疑問を持つ人が多いことに気づき、より体系的に、分かりやすく教える方法を模索するようになりました。例えば、特定のUnity Packageの導入手順について、文字だけでなく画面共有をしながら手順を追って説明したり、よくあるエラーとその対処法をまとめて提示したりといった工夫です。

特に印象的だったのは、ある初心者のユーザーが、私が教えたアバター改変の方法を用いて、自分の理想とするアバターを完成させ、「おかげで初めて自分のアバターをVRChatに持ち込めました!」と感動してくれた時です。この瞬間、「自分の持つ知識が、誰かの『やりたい』を叶える力になるのだ」と強く実感しました。

「教える」活動が自分にもたらしたもの

人に何かを教えるということは、単に知識を伝えるだけではありません。相手の理解度に合わせて言葉を選び、専門用語を避け、時には全く異なるアプローチで説明する必要があります。また、予期せぬエラーへの対応や、相手が本当に困っていることを見抜く観察力も求められます。VRChatでのこの経験は、私のコミュニケーション能力や問題解決能力を大きく引き上げてくれました。

さらに、人に教えるためには、自分自身の知識を深く理解している必要があります。「なんとなくできる」レベルでは、他人に説明することは困難です。このため、教えるという活動は、結果として私自身の学習の質を高めることにも繋がりました。新しい情報に触れるたびに、「これはどう説明すれば分かりやすいだろうか」「他の人はここで躓きやすいかもしれない」といった視点が自然と働くようになりました。

しかし、この経験で最も大きかったのは、自己肯定感の向上です。現実世界では、自分のスキルや知識がどのように社会に貢献できているのか、実感しにくい場面も少なくありませんでした。しかし、VRChatという場所で、私の知識が具体的な形で誰かの助けとなり、その結果感謝されるという経験を重ねるにつれて、「自分には価値があるのだ」「自分の持っているものは誰かにとって役に立つものなのだ」という感覚が強くなっていきました。これは、それまで内向的で、自分の能力に自信を持てずにいた私にとって、非常に大きな変化でした。

現実世界への波及効果と今後の展望

VRChatでの「教える」経験は、現実世界にも様々な形で影響を与えています。職場で後輩に業務知識を教える際、相手の立場に立って考える姿勢が自然と取れるようになりました。また、プレゼンテーションを行う際にも、どのように構成すれば聴衆に伝わりやすいかを意識するようになり、以前よりも自信を持って臨めるようになりました。趣味の分野でも、友人や知人に何かを説明する際に、より分かりやすく、相手の興味を引くような話し方ができるようになりました。

さらに、VRChatで得た技術的な知見や、多様な人々と関わる中で培われたコミュニケーション能力は、現実世界でのキャリアパスを考える上でも新たな選択肢を示してくれました。オンラインコミュニティでのファシリテーションや、技術的な情報を分かりやすく伝える仕事など、VRChatでの経験が直接的なスキルとして活かせる分野があることを知りました。

VRChatは、単なる仮想空間ではありません。そこでの活動は、私たちの内面に変化をもたらし、現実世界での生き方や考え方にも影響を与えうる力を持っています。私の場合は、「教える」という経験を通じて、自己肯定感を高め、コミュニケーションスキルを磨き、さらには新たなキャリアの可能性に気づくことができました。これからも、VRChatという場で得た学びを大切にしながら、現実世界でもそれを活かしていきたいと考えています。