私のVRChat体験記

VRChatでのイベント企画経験が、現実世界のプロジェクト推進とリーダーシップにもたらした変化

Tags: VRChat, イベント企画, コミュニティ運営, リーダーシップ, キャリアスキル

VRChatとの出会いは、純粋な好奇心からでした。VRデバイスを手に入れた私は、その可能性の広がりを体験したく、様々なプラットフォームを試す中でVRChatにたどり着きました。当初は、ワールドを巡ったり、フレンドと雑談したりと、気ままに過ごすことがほとんどでした。それはそれで満たされる時間でしたが、やがて私は、VRChatという空間が持つ「何かを生み出す」側面に関心を持つようになりました。

特に私を惹きつけたのは、ユーザーによって企画・運営される様々なイベントでした。音楽ライブ、演劇、勉強会、あるいはテーマに沿った集まりなど、その多様性と熱量に感銘を受けました。そして、自分自身もこのような場を創り出してみたい、という思いが芽生え始めました。

初めて企画したのは、本当に小さな身内向けのイベントでした。特定のテーマについて語り合う、というシンプルな内容です。それでも、日時を決め、告知画像を準備し、使用するワールドを選び、当日の流れを考え、参加者への呼びかけを行う、という一連のプロセスは、私にとって初めての経験でした。参加者が数名だったとしても、イベントが無事に終わり、「楽しかった」という言葉を聞けた時の喜びは格別でした。この成功体験が、次のイベントへの意欲へと繋がっていきました。

経験を重ねるにつれて、企画するイベントの規模は少しずつ大きくなっていきました。パブリックインスタンスで開催するイベント、特定のワールドの複数インスタンスを跨いだ企画、あるいは他のイベント主催者との連携など、難易度も高まっていきました。そこで直面したのは、計画通りに進まない現実です。参加者数の変動、予期せぬ技術的なトラブル(サーバー負荷によるパフォーマンス低下、アバターのポリゴン過多によるクラッシュなど)、多様なバックグラウンドを持つ人々とのコミュニケーションの難しさなど、様々な課題が発生しました。

しかし、これらの課題に一つずつ向き合い、解決策を探る過程で、私のスキルは磨かれていきました。例えば、大人数が集まるイベントでは、ワールドのインスタンス分けをどう設計するか、参加者が迷わない導線をどう作るか、といった空間デザインやユーザーインターフェース的な思考が求められました。トラブル発生時には、冷静に状況を把握し、代替案を素早く検討し、関係者に的確に指示を出す判断力が必要でした。また、チームでイベントを運営する際には、それぞれの役割分担を明確にし、情報共有を密に行い、モチベーションを維持するリーダーシップが不可欠であることを学びました。特定の技術に明るいメンバーがいれば、彼らと協力してパフォーマンス最適化に取り組んだりもしました。VRChatには、単に遊ぶだけでなく、こうした実践的なスキルを磨く機会が豊富に存在しているのです。

VRChatでのこうした経験は、現実世界での私に驚くべき変化をもたらしました。私は以前、プロジェクトの推進や人前でのリーダーシップに自信がありませんでした。しかし、VRChatで大小様々なイベントを成功させた経験が、私に確かな自信を与えてくれました。

職場での会議の進行を任された際、VRChatでのイベント開始時のような、参加者全体を見渡しながらスムーズに進行する感覚が自然と身についていました。複雑な業務プロジェクトに関わる際には、VRChatでのイベント企画で培った計画立案、タスク管理、リスク予測、そして予期せぬ問題発生時の冷静な対応力が大いに役立ちました。関係各所との連携が必要な場面でも、VRChatでの多様な人々と協力して一つの目標に向かう経験が、円滑なコミュニケーションを可能にしてくれました。

単に指示を出すだけでなく、チームメンバーの意見を聞き、それぞれの強みを活かすという、VRChatでの共同イベント運営で学んだリーダーシップのスタイルは、現実世界でも多くの場面で有効であることを実感しています。VRChatで「こういうイベントがあったら面白いのではないか」と自由な発想で企画し、それを実現するために試行錯誤した経験は、「不可能だと思われたことでも、方法を考えれば実現できる可能性がある」という前向きな姿勢を私にもたらしました。

VRChatは、私にとって単なる娯楽空間以上の存在となりました。それは、現実世界ではなかなか得られない実践的なスキルを、楽しみながら、そして時に失敗しながら学ぶことができる「もう一つの社会」です。そこで培ったイベント企画・運営の経験は、私の現実世界でのプロジェクト推進力とリーダーシップを確かに強化してくれました。これからも、VRChatでの活動を通じて、新たなスキルを学び、それを現実世界の様々な場面で活かしていきたいと考えております。